匠の技

美しい振袖

二十歳の振袖は、上質な布の上で繰り広げられる匠の技の競演です。
世界に誇れる伝統工芸技術の中でも、きもの制作に関わる繊細な技法は、多くの時間を要し、根気のいる作業ばかりです。
振袖に今様の美を誕生させている四季折々の伝統文様には、
職人たちが一途に向き合って手描き、絞り、刺繍、箔など技を尽くし、時代感覚を取り入れた色使いとデザインが施されています。
ここでは、振袖制作におけるさまざまな技法の中から、いくつか代表的な技法を紹介しましょう!

手描き友禅

わが国の代表的な染色法のひとつである友禅(ゆうぜん)。糊を用い、隣り合う色同士がにじまないように地の色と文様を美しく染め分けていきます。「手描き友禅」は紙に描かれた下絵をもとに、白生地へ一筆一筆彩り豊かに丁寧に色をのせてゆく技法です。

刺繍

日本では飛鳥時代からあったとされる刺繍は髪の毛より細い絹糸を、絵の具を混ぜるかのように合わせて色を創ります。色糸や金銀糸で色彩と光沢を自在に操り、濃淡や潤滑までも表現し、文様をさらに立体的に仕上げます。刺繍の技法には何種類もあり、緻密な技法を高い技術で表現するほど、より高価なものとなります。

金彩

友禅を施した布の上に絶妙で煌びやかな質感を加えるのが印金(金箔加工)や箔などの金彩加工です。印金は金や銀などの箔を糊で定着させ、文様を作る装飾技法。糸目を埋めて金銀の輪郭線や、型紙を使って金を加えることで、華やかな友禅の振袖をより豪華に仕上げます。

絞り

日本で最も古い染色技法のひとつ。疋田(ひった)、縫い締め、鹿の子、桶、辻が花など様々な技法があります。一子相伝のため、すでに消えてしまった技法も。糸の結びが緩ければ染料が染めこみ、美しい文様にならないなど布を絞る際の力加減が難しく、熟練の技術と根気のいる技法です。

辻が花

室町時代に隆盛を極め、そのあと姿を消したその技法は、幻の花になぞらえられ「辻が花」と呼ばれます。友禅を施した後で絞りを重ねて奥行きを醸し出し、そこに描き絵や箔・刺繍などを併用することで絞り染め本来の美しさを最大限に生かします。膨大な手仕事の積み重ねによって生まれる究極の美の技法と言われます。

二十歳の旅立ちにふさわしく、
歴史と伝統に裏付けられた世界に誇れる技は振袖の隅々までを華麗に彩り、
ふわりと纏えば着る人とさらに溶け合い、高め合い輝きを放ちます。
そんな匠の技による振袖を、
どうか、一生の宝物のひとつとして、楽しんでください!